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タグ:カルロス・アコスタ ( 3 ) タグの人気記事

オシポワのマノン/ロイヤルバレエ(2014/2015シーズン)

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 今年のロイヤルバレエの新シーズンは、マクミランのマノンで幕開けです。もう既に何度か観ているのですが、今日の公演は特別楽しみにしていました。今日のマノンはオシポワ。彼女がロイヤルバレエに入団したときには、彼女の踊るマノンというのは想像できなかったのですが、昨シーズンのロミオとジュリエットがあまりにも素晴らしかったので、一気に期待が高まりました。
 ちなみにこれは私だけの思いではなかったようで、今シーズンのロイヤルバレエのチケット予約で、一番チケットが取りにくかったのが他ならぬこのオシポワのマノンでした。発売日からものすごい勢いで売れてしまい、他の日程は今でも空席が目立っているのに、オシポワの公演だけ早々に売り切れ。マノンは私が最も好きな演目の一つなので、何とかオシポワの公演は良い席で観たいと思っていたのですが、なかなか思うような席が取れません。が、なんと直前になって最前列の席に一枚リターンが! 即座に確保して、今日は胸を躍らせながらロイヤルオペラハウスに向かいました。


 最初の第一幕、登場してしばらくはちょっと影が薄いというか、あまり個性が前に出てこないマノンでちょっとびっくりしましたが、デ・グリューと駆け落ちしてからの寝室のパドドゥはがらっと変わってものすごく積極的。気持ちがどんどん昂って愛情が溢れてくるという感じで、鮮烈かつ濃密、踊りすすむにつれて一気に華麗さが増していきます。ふとデ・グリューを見るマノンの眼差しがぞくっとするほどエロティックで、このパドドゥは圧巻でした。
 その後、デ・グリューが不在の隙にレスコーとともにやってきたムッシューGMを相手にするマノンは、打って変わって冷静。相手の財力に惹かれつつも相手との距離はしっかり冷静に意識して、関係と距離感を完全にコントロールしているという印象でした。

 続く第二幕ですが、今までに他の人では見たことがないくらい、オシポワのマノンは明らかにデ・グリューに気持ちが傾いています。チラチラと常にデ・グリューの様子を盗み見し、彼が寄ってくると明らかな心の動揺を表に出します。一方でムッシューGMへの態度は、明らかに「商売」上の愛想の良さに終始します。娼婦が客に対するのと、完全に同じ。
 ここは、他の人の踊るマノンだと、富を求めるマノンとデ・グリューに惹かれるマノンが、ほぼ五分五分で拮抗しているのが普通です。そのきわどいバランスがマノンに魔性の輝きを与え、ぎりぎりのところで再びデ・グリューのもとに帰ってくる場面にドラマの大きな展開をもたらすことで、続く二度目の寝室のシーンに(亀裂の入った緊張感を伴いつつも)再び甘美さももたらすことになります。しかしオシポワの演じたように、ここまでマノンがはっきりとデ・グリューに気持ちを残しているのが分かると、彼女が彼の元に戻ってくるのは既定路線という感じになってしまいます。続く寝室のシーンからは、だから甘美さは完全に失われ、二人の間にできてしまった取り返しのつかない溝だけが際立ちます。また、これだけマノンがデ・グリューへの一貫した愛情を示していると、マノンが帰ってきたときに彼女の腕輪に嫉妬してみせたりするデ・グリューは、あまりにも幼くて度量も狭い、どうしようもないダメ男に見えてしまいました。(でもなぜかダメ男ってもてたりするんですよね。世界って不公平。)一方のマノンは姉さん女房のように完全にデ・グリューの上に立っていました。


 最後の第三幕は、ある意味で「オシポワらしい」舞台だったと思います。この幕では最後の沼地のパドドゥが有名ですが、その直前、マノンを犯した看守をデ・グリューが刺し殺す場面があります。ここで、死んだ看守を目の前にしたマノンには明確な踊りが与えられていません。ここは各バレリーナが、素で演技をする必要があるのですが、この部分はオシポワはほとんど何もしていないように私には見えました。恐らく彼女の中には何らかの心象がイメージされていたとは思うのですが、それを踊りではなく演劇で表現するための方法論が、彼女にはまだうまくつかめていないという気がします。ここはデ・グリューの踊りもオーケストラの音楽も極めて緊張感が高いのですが、残念ながらオシポワのマノンだけ間延びしている印象でした。
 が、続く沼地のパドドゥになると一転。オシポワの見事な踊りが冴え渡ります。柔らかい体が美しく開き、伸びて、素晴らしく華麗に踊りが続くうちに、マノンの最後の生命の輝きが、鮮やかに華開いて舞台に満ちわたりました。

 全体としては、演技の未熟さと踊りの圧倒的な凄さ美しさが混在した、不思議な舞台でした。演劇面の弱さから、この舞台の出来をあまり評価しない人も中にはいるのではないかという気もしますが、私としては未熟、未完成というにはあまりにも魅力的な今日の舞台に、オシポワがまだまだ進化する余地を示したと前向きな印象を持ちました。今後数年が経過したときに、彼女がどういう舞台を見せてくれるのか、楽しみにしています。


 オシポワ以外のダンサーについても簡単に。今日のデ・グリューはカルロス・アコスタでしたが、ついに彼にもこの日がきたというべきか、はっきりとした肉体的な衰えが感じられてしまいました。舞台での存在感や演技力はいつもどおり見事なのですが、ソロで踊ったときの足腰の粘りが失われているのが本当に残念でした。
 マノンの兄レスコーは、直前までキャストが発表されなかったのですが、蓋を開けてみればティアゴ・ソアレス。さすがの踊りと演技でした。彼の酔っ払いは本当に面白いのです。そのレスコーの愛人役は、役デビューのクレア・カルヴァート。美しい人で踊りもとてもきれいなのですが、ちょっと雰囲気が真面目で重い感じ。ここはラウラ・モレラみたいに弾けた雰囲気の方が私は好きです。ちなみに今シーズン、ユフィさんもこの役を踊っていますが、とても味のある演技を見せてくれています。
 マノンを犯す看守役は、これをやらせると世界一であろうガリー・エイヴィス。いつもながらえげつないほど露骨な演技をぶちかましてくれました。

 なんだかんだと書きましたが、個人的には大いに楽しんだ今日の舞台でした。オシポワはもう一日マノンを踊りますが、ちょっと出張が重なって見に行けなさそうな様子。残念です…
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by londonphoto | 2014-10-08 09:02 | バレエ | Comments(4)

大輪の花

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 二日続けてのバレエです。今日はプロコフィエフのロミオとジュリエットでした。ジュリエットは今シーズンからロイヤルバレエに入団したナターリア・オシポワ、ロミオはカルロス・アコスタです。オシポワは以前ゲストとして白鳥の湖を踊ったのを観たときに、心理描写よりもフィジカルな明快さに重点を置いたような舞台だったので、それはそれとして(大いに)楽しみつつも、彼女がマクミランを踊るとどういうことになるのだろうかと、やや気になる面もありました。

 が、 — というこの「が」は本当に大きな「が」なのですが — 幕が開いてみると彼女の演じるジュリエットにものの見事に惹き込まれてしまいました。最初に登場する場面は、純粋で無垢な少女というよりは、極めつけのおてんば娘という感じで、これはある程度予想通りでしたが、人形を持って跳ね回るジュリエットからすでに目が離せません。あっと思ったのは仮面舞踏会で初めてロミオとジュリエットが二人で踊るシーンで、ジュリエットしか目に入らなくなっているロミオを翻弄し、彼の感情を煽る仕草は、今度は完全に小悪魔キャラ。早熟な魔性を振りまいていました。そして続くバルコニーの密会のシーンでは、妖精のようにどこまでも神秘的な踊りを繰り広げ、まるで夜露に結ぶ月影が人の形を取って踊っているかのような、透明で美しいパドドゥがいつまでも続くかのようでした。
 これだけでも既に頭がぼーっとなってしまうほどのインパクトだったのですが、圧巻はやはり終幕。ジュリエットのロミオに対する切実な愛情と、パリスに対する拒絶を、痛々しいまでに冴え冴えと描き出し、特に冒頭の寝室でのロミオとのパドドゥでは、ため息が出るようなしなやかで美しい動きが随所に現れます。そこから最後のカタストロフィまで、オシポワはジュリエットの心理を鮮やかに克明に演じ切って、この演目でもかつて感じたことがないほど深く印象に残る舞台でした。

 私がバレエを見始めてからまだ日は浅いのですが、それでも今まで可憐なジュリエットや意志の強いジュリエット、おてんぱなジュリエットなど、演じるダンサーによってそれなりに様々なジュリエットを見てきたつもりです。しかし今日のオシポワほどこの役の可能性を幅広く一人で演じ切った人は、少なくとも私の記憶にはありません。本当に素晴らしい舞台でした。会場にいた人々も、全員が固唾をのんで舞台を見詰めていたように思います。

 ちなみにオシポワのことばかり書きましたが、ロミオのアコスタも相変わらず素晴らしく、いつもながらの豊かな演技力でロミオを演じつつ、オシポワを見事に引き立てていました。また、脇役陣も充実していて、タイボルトのエイヴィス、マキューシオのセルヴェラ、娼婦のリーダーのモレラといった人々が舞台を盛り上げていました。細かいながらも個人的に嬉しかったのは、ジュリエットの乳母役がジェネシア・ロザートだったことで、彼女はジュリエットが薬のせいで死んだとき(実際には仮死状態ですが)、それを嘆く演技が素晴らしくて、舞台にぐっと深みが出るのです。
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by londonphoto | 2013-11-22 09:57 | バレエ | Comments(4)

ロイヤルバレエ/白鳥の湖/オシポワ&アコスタ

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 いよいよロイヤルバレエの新シーズンが始まりました。最初の演目は白鳥の湖です。初日は数日前でしたが、私の初日は今日。もともとこの日はタマラ・ロホの出演が予定されていたのですが、彼女が引退してしまったために(泣)チケットの発売時には出演者未定の状態でした。しかし、蓋を開けてみると元ボリショイバレエ(最近移籍したそうですが)のオシポワが出演するということで、ロイヤルバレエ以外のバレエ団には全く疎い私にとって、「外の世界」のダンサーを知るまたとないチャンスとなりました。
 そのオシポワ、明解な動作のキレが抜群で、これだけ一つ一つの動きがクリアに見えるダンサーは、ロイヤルバレエではあまり見かけない気がします。しかもその上動きが美しく、舞台と客席を覆い尽くすオーラも圧巻。もう溜息しか出ません。ストーリーを巧みに語ったり、心の奥の感情の襞の細部まで描き尽くすという点では物足りないものもありましたが、それを全く忘れてしまうくらいの美しい踊りを楽しみました。

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by londonphoto | 2012-10-11 08:19 | バレエ | Comments(4)